この記事では、LGBTと養子縁組制度について紹介します。
同性婚の導入はまだ先になりそう
LGBT当事者の方で同性のパートナーがある方には現状として、婚姻制度が存在しません。G7先進7カ国の中でも同性婚が認められていないのは日本だけとなってしまいました。
そのため、同性パートナーは以下のような問題に直面してしまいます。
・相続権がない
・入院中の付き添いができない
・入院中に病状説明を受けられない
・手術の同意権がない
・施設入所の際に身元引受人になれない
・配偶者控除を受けられない
・公営住宅に入居できない

養子縁組を活用できないか?
養子縁組を活用している同性パートナーもいます。
しかし、本来この養子縁組制度は法律上の親子関係を生じさせる制度のため、その活用には注意点もあります。
養子縁組制度を利用するメリットとデメリット
メリット | デメリット |
・相続権を得ることができる ・扶養控除を受けることができる ・入院中の病状説明を受けることができるほか、付き添いも認められる ・入院・入所の際に身元引受人になることができる ・遺族年金を受給することができる ・公営住宅や賃貸住宅で同居することができる | ・本来の養子縁組制度の趣旨と異なるため、無効とされる可能性がある ・婚姻関係における財産分与請求などができない ・相続の際に相手方の親族とトラブルになる場合がある(養子縁組無効の訴えを主張される場合も) ・同性婚制度が創設された時に婚姻できないリスクがある |
同性婚が創設されたときのリスク
上記のデメリットの中で、最も注意すべき点は、「同性婚制度が創設された時に婚姻することができないリスク」です。
法律では、養子縁組の関係にあった者は、離縁をしても婚姻をすることはできないと定められています。
養子若しくはその配偶者、又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と、養親又はその直系尊属との間では、第729条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。
民法第736条
同性婚創設時に、同性パートナーと養子縁組関係にある者への立法的配慮がなされることを望まれますが、養子縁組制度を本来と違う趣旨で利用していた場合についても配慮されるかは未知数というところではないでしょうか。
同性パートナーに今できること
以上のように、養子縁組制度は同性パートナー間に親子関係を生むことから婚姻に近い状態を作り出すことができます。
一方で将来のリスクとして同性婚ができなくなる場合が考えられます。
では、養子縁組以外に同性パートナー間で活用できる制度は他にないでしょうか?
同性パートナーシップ制度の利用
まず考えられる制度としては、同性パートナーシップ制度です。
同性パートナーシップ制度を導入している自治体は限られていますが、既に人口カバー率が60%を超えています。
お住まいの自治体に同性パートナーシップ制度がある場合には利用することを考えてみるのも良いでしょう。
ただし、同性パートナーシップ制度の多くはその自治体及び協力する民間企業の間でだけ有効なものなので、婚姻や養子縁組制度に代るほど大きな効果は無いのが現状です。
同性パートナーシップ制度でできること
○2人の関係性について行政が証明書を発行してくれる
○公営住宅への入居が可能に(自治体により異なる場合あり)
○パートナーを生命保険の受取り人に指定(保険会社により異なる)
○賃貸契約を結びやすくなる
○民間企業の家族割などが受けられる場合がある
パートナーシップ制度の内容や、導入自治体について知りたい場合は下記のページを参考にしてください。
任意後見制度の利用
元気なうちに互いに任意後見契約を結ぶことにより、パートナーの一方の判断能力が低下したときには、もう一方のパートナーが後見人になることができます。
後見人は、病院への入院・施設への入所の際に身元引受人になれたり、手術の同意権を持ったり、納税手続の代行や預貯金の管理など、自由に設定した範囲内でパートナーを支えることができます。
この制度は同性パートナーの老後の不安などに対応することができます。
遺言書の利用
同性パートナーは互いに相続権を持ちませんが、遺言書を残すことによってパートナーに財産を遺すことができます。
遺言書が無かった場合には、全て法定相続人たちに引き継がれることとなってしまいます。
同性パートナーに財産を遺したい場合には、遺言書を作成することによって備えましょう。
⇒事実婚や同性パートナーへの財産を遺すには遺言書がおすすめ(内部リンク)
⇒遺言の方式(内部リンク)

まとめ
いかがでしょうか?
養子縁組制度はメリットはたくさんありますが、他者から無効を主張されたり、将来同性婚をすることの障害になってしまう可能性があります。
しかし、同性婚が導入されていない日本においては、上記のような様々な制度を利用することによって、足りない点をカバーしていく必要があります。
すずかけ行政書士事務所では、任意後見契約書の作成、遺言書の作成などLGBTQの当事者の方に寄り添ったサポートをさせていただいております。
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