親に認知症等により判断力の低下がみられるときは、私たちは後見人になることができるのでしょうか?
今回は、日本で利用されている「後見制度」について紹介します。
親の後見人になれない!?
万が一親が認知症等により判断能力が低下したときには、息子あるいは娘である私が後見人になろうと思っていても、後見人になれないことがあります。
後見制度についてご存じの無い方には少しショッキングなことですよね。
認知症等で本人の判断能力が低下した場合、預貯金の引き出しすらできなくなってしまいます。
これを打開するためには「法定後見制度」の利用を検討することになります。
成年者の判断能力が低下し、自分で財産の管理(預貯金や不動産の管理)等ができなくなった場合には管轄の家庭裁判所に「後見等開始の申立て」を経て後見人を選任します。
この法定後見人が預貯金の管理などを担うことになります。
ある日突然、家庭裁判所から選任された見知らぬ後見人が現れることになります。

後見人は、顔見知りで信頼できる人にお願いしたいなあ・・・。

私は娘に後見人になって欲しい。
家庭裁判所は家族の財産の使い込みを恐れる
後見人を選任する家庭裁判所は、後見人となった家族が本人の財産を使い込むことを恐れているのです。
そのため、家族が法定後見人に就任することが認められない場合があるのです。

私の祖母のケース
私の祖母は、90歳を過ぎても農作業をするほど元気な高齢者でした。しかし、手の骨折により入院することになり、あっという間に認知症を発症してしましました。(要介護5)
コロナ過ということもあり、病院で面会をすることが叶わなかったこともあったのかもしれません。
しかし、判断能力を失った祖母の預貯金は一切動かすことができなくなってしまいました。よって、祖母の入院代金や介護施設の利用料等は私たち家族が支弁するほかありません。
家族が後見人になるには?
では、家族が認知症等の親の後見人になることができないのでしょうか?
実は、家族が後見人になる方法があります。
それは、同じ後見制度であっても「任意後見制度」というものを利用した場合です。
後見制度は本人の判断能力が低下してから後見人が選任される「法定後制度」と本人の判断能力が低下する前に予め任意の後見人と契約を結んでおく「任意後制度」の2種類があります。
「任意後見制度」を上手に利用することで、自分の判断能力が低下したときに、自分が好きな人(友人などでも可能)に後見人になってもらうことができるのです。
また、後見の範囲も自分が好きなものにすることができます。
「法定後見人」と「任意後見人」の違い
法定後見制度 (後見の場合) | 任意後見制度 | |
利用できる人 | 判断力が不十分な方 | 現在は判断能力がある方 |
後見人 | 家庭裁判所が選任 | 本人が好きな人を選べる |
代理権の範囲 | 本人が行うほとんど全ての法律行為 | 契約で定めた範囲 |
代理権開始時期 | 成年後見開始の審判が確定したとき | 本人の判断能力が不十分になったとき |
後見人への報酬 | 裁判所が決定 | 契約で定めた額 |

大切なことは前もって備えること
上記のとおり、「任意後見制度」は本人の判断能力が低下した後からでは多くの場合利用することができません。
ご家族と話し合って、万が一のときのために「任意後見契約」を結んでおくことを強くおすすめします。
すずかけ行政書士事務所では、任意後見契約の作成や任意後見人への就任などを承っております。
ご興味のある方は、こちらからお気軽にご相談ください。